ベトナムでは、古来よりかまどを大切に守ってきました。
かまどの神様(Ông Táo)は、かまどや台所を守る神様として各家庭に宿る中国発祥の神様だそうですが、ベトナムでは独自の発展を遂げているようです。
実はこのかまどの神様(オンタオ)は一人の神様ではなく、3人で一つの神を形成しています。
そして、それぞれに役割があるのですが、説明をする前にかまどにまつわる物語をご紹介します。
かまどの神様の物語
かまどの神様は、ティ・ニ(女性)、チョン・カオ(男性)、ファム・ラン(男性)の3名をめぐる恋話に由来します。
ティ・ニとチョン・カオは夫婦で、深く愛し合ってしましたが、子どもができないことからケンカが多くなり別れてしまいます。
時がたち冷静になったチョン・カオは自分の行為を後悔し妻を探す旅に出ます。
食料とお金が尽きてしまいますが、物乞いをしながらでもティ・ニを探し続けます。
ある日、物乞いをしようと家の戸を叩くと出てきた女性は、ずっと探していたティ・ニでした。
ティ・ニもチョン・カオであることに気づき、家に招きいれて現在の夫であるファム・ランについて話し始めます。
ティ・ニがチョン・カオに食事を与えますが、お腹も心も満たされたのかチョン・カオ眠ってしまいます。
するとその時、ファム・ランが帰宅します。
とっさにティ・ニは眠っているチョン・カオを裏庭に積んであった藁の中に隠します。
それに気が付かずファム・ランは畑の肥料にしようと藁に火をつけたためチョン・カオは焼け死んでしまいます。
ティ・ニはチョン・カオを助けようと燃え盛る火の中に入っていきます。
妻の思いがけない行動に、ファム・ランも火の中に身を投じました。
3人の魂が天の玉皇上帝のもとにたどり着くと、玉皇上帝は3人の深い愛情に心を動かされます。
ファム・ランは「ト・コン」と名を改め台所での仕事を見守る役割を、
チョン・カオは「ト・ディア」として家の中の仕事を見守る役割を、
ティ・ニは「ト・キ」という名を与えられ、市場を見守る役割をそれぞれに与え、3人を「かまどの神様」と命名しました。
それからというもの「かまどの神様たち」は住居への魔物の侵入を防いだり、家族全員の穏やかな生活を守りながら、1年に1度、1年間の家庭で起きた良いことも悪いことも全てを天に報告することを役目としたのです。
※玉皇上帝とは道教の最高神です。
かまどの神様の日
旧暦の12月23日にかまどの神様たちは家内で起きた良いことも悪いことも含めて、天に住む玉皇上帝へ報告に行くわけですが、その乗り物が鯉と言われています。(南部では鷺や馬)
そのため神様たちを心よく送り出すためにいろいろとお供えをする必要があります。
その一つに鯉を仏壇に捧げ、その後は川へ放流します。
「かまどの神様の日」に何をするのか気になった方は旧暦の12月23日は「かまどの神様の日」をご覧ください。
[…] 【かまどの神様物語】を読んでみて下さい。 […]