昔むかし、中国の明がベトナムを支配していた頃のお話です。
明(中国)の乱暴な支配に苦しむ人びとを助けようと、ベトナム北中部のラムソン(Lam Son)で挙兵する人びとが現れました。
しかし彼らは満足な武器もなく、何度も明の軍隊に挑んでは打ち負かされていました。
これを見ていた海の守り神である貉竜君(ラックロンクアン)は、彼らに自分の神剣を貸し与えて明軍を撃たせようと決意しました。
ほどなくして、タインホア(Thanh Hóa)の入り江で漁をしていた漁師が、網にかかった見事な剣を見つけます。
しかしこの剣には手で持つ柄の部分がありませんでした。
漁師はこの剣を大切に家にしまっておきます。
漁師がラムソンの兵に加わり、独立のために命がけの戦いに参加するようになったある日のこと、軍の大将であるレ・ロイという人物が彼の家にやってきました。
すると突然剣は輝きだしたのです。
レ・ロイは見事な剣に目を止め、じっくりと眺めます。
よく見ると剣に「順天/ Thuận Thiên」と刻まれていました。
しかし、それが神剣だとは誰も気付きませんでした。
その後も戦いは続き、敵に追われたレ・ロイは逃げた先のガジュマルの木の上で輝く剣の柄を見つけます。
そしてあの日見た剣のことを思い出しました。
彼の思った通り、その宝石を散りばめた柄はあの見事な剣にぴたりとはまりました。
剣を大切に守っていた男は言います。
「これは、あなたが偉大な仕事をするようにという神のお告げです」と言いレ・ロイ将軍に剣を捧げます。
それからというもの、レ・ロイの軍は日増しに勢力を強め、神剣はあらゆる戦場で見事な働きをしました。
彼らは次々に明軍を撃ち倒し、ついにベトナムの地から敵の姿は消え失せました。
こうして神剣は人びとに平和をもたらしたのです。
明軍を追い払った翌年のある日、王となったレ・ロイが王宮の前のターボン湖(hồ Tả Vọng)で船に乗っていた時のことです。
湖の中ほどで突然大きな金色の亀が姿を現し、こう言いました。
「王様、その剣を竜の神にお返しください」
それは、海の神貉竜君(ラックロンクアン)が遣わせた亀だったのです。
王から剣を受け取ると、亀は水に潜って深く深く消えていきました。
それ以来、この湖は「還剣(ホアンキエム)湖」と呼ばれるようになったということです。
歴史的な経歴や政治などの功績を詳しく知りたいなら通りの名前にあるレロイ(Le Loi)ってどんな人
おまけ
水上人形劇の題材はベトナムの伝説や民話がもとになっていますが、中でもホアンキエム湖の起源を紡ぐ「レ・ロイ王、剣を返す(Lê Lợi trả gươm cho rùa thần)」は定番の演目として愛されています。
[…] 更に詳しい物語は時代を超えた英雄レロイ:ホアンキム湖の物語をご覧ください。 […]
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