ネコの着ぐるみ

むかしむかし、ある人が一匹のネコを飼うことにしました。

そのネコはなかなかにかしこくて、しかも美しいネコだったので、その人は「天(てん)」という名前をつけて、大変かわいがっていました。

けれどもネコの名前に「天」というのは、なんだか変なのでその人の息子が「ネコに『天』という名は、立派すぎて変ですよ。ちがう名前にしたらどうですか?」と、いいました。

でも父親は「いやいや、うちのネコは素晴らしいネコなんだ。だから素晴らしい名前でいいんだよ」

そういって、息子の話しを聞きいれようとしません。

そこで息子は、となりの家のおじいさんにたずねてみました。

「お父さんがネコの名前に『天』という名をつけたのですが、おかしいとおもいませんか?」

おじいさんはしばらく考えてから、ネコ好きの人の家へやってきました。

「あなたはなぜ、ネコに『天』という名をつけたのですか?もっとネコらしい名前にした方が、よいのじゃありませんか?」

おじいさんがそういうと、ネコ好きの人は「いやいや、うちのネコには『天』という名前がピッタリです。なぜなら天は、この世の中で一番高いところにあるものですからね」

そういって、相手にしようともしません。

そこでおじいさんは、負けずにいいました。

「だけど、くもはその天を見えないようにかくしてしまうことができますよ」

「・・・そうか、なるほど!」

ネコ好きの人は、感心したようにうなずきました。

「そういわれればそうだ。では、ネコの名前は『くも』にかえよう」

ネコ好きの人がそういうと、おじいさんはまた言葉をつづけます。

「でも、くもは風にふきとばされてしまいますね」

「それもそうだな。では、風という名前にかえましょう」

「いや、風はいくらふいても、壁にとめられてしまいます」

「よし、それじゃ名前は壁にしよう」

「でも、壁はネズミに穴を開けられてしまいますよ」

「じゃあ、ネズミという名前にしましょうか」

「ネコにネズミという名をつけるのもおかしいでしょう。それに、ネズミよりも強いものはネコですよ」

「ああ、なるほど。ネコが一番強いというわけだ。よし、家のネコの名前はネコにきまった」

「それがいい。やっぱりネコには、ネコという名前がピッタリですよ」

おじいさんは手をたたいて、ニッコリほほえみました。

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By なら

介護業界で15年ほど勤務、近年はベトナムの介護施設で管理者として働く。奥様はベトナム人、息子一人。ベトナム語を勉強し、幾度も挫折を繰り返し復活しています。

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