ベトナムの軍隊

ベトナムで働く日本人の友人と話している時に”もし従業員が徴兵されたら会社はどうするのだろう?”が話題になりました。

彼の会社は20歳前後の男性が多く働いておりとても心配した様子でした。

「新しく雇用するしかないのでは?」

「兵役を拒否することはできないのかな?」などなど話は盛り上がり解散したのですが、私も疑問に思っていましたので帰宅してからいろいろと調べてみました。

ベトナムにおける兵役制度と労働雇用契約

ベトナムには兵役制度があり兵役法78/2015/QH13号により定められています。

原則として18歳以上25歳以下の男性は兵役が課されています。

ですので人民委員会より入隊のための招集通知及び入隊のための健康診断の受診通知が該当のベトナム人男性に届いた場合、必ず招へいに応じなければなりません。

現在の労働法では、労働者が兵役に服する場合は、労働契約の一時履行停止の事由にあたり従業員は仕事へ行く必要はありません。そして兵役の終了から15日以内に職場に復帰できることとなっています。

つまり会社は当該従業員に対して引き続き雇用を継続する義務を負うことになります。

なお、その期間は給与等の支払いをする必要はありません。

法令上の規定と実情

法律ではこのように義務付けられてはいますが、実際徴兵へ行ってない人は多く見受けられます。それはどうしてでしょうか?

徴兵の期間は2年間だが、毎年徴兵する人数は限られており国民全員が徴兵されるわけではない。

ちなみに2023年度はホーチミン市で約4700人、ハノイ市で約4200人、ビンズオン省で約1800人、トゥアティエン・フエ省で約1452 人、ハイフォン市で約2800人、ダナン市で約1300人、ドンナイ省で約3100人、クアンニン省では約1850人の新兵が入隊した。

今後は少子高齢化になっていくので既定の徴兵人数が集まりにくくなるでしょう。なので学歴や年齢に応じた兵役期間の短縮や免除措置などについて、何かしらの改正が今後あると思います。

軍隊の整列

徴兵に志願もしくは軍隊に選ばれやすい人

志願兵の大半が農村部や過疎地域出身の貧困層の青少年が多いようです。つまり、農村部では職がないため、軍に入隊する事で保証された生活を享受しようとする意図があるようです。田舎の農家の次男・三男などが、軍隊へ行くことが多いと言えます。

軍隊へ入隊後のメリット

隊員の多くは貧困層ということもあり、いくつか優遇された制度があります。

  • 家族の税金を優遇
  • 退役後の職業を斡旋 など

軍隊に徴兵されないためのいれずみ・タトゥー

徴兵へ行きたくない人は意図的にいれずみやタトゥーを身体に入れます。

また反共産的、奇妙かつ異端な内容、民族間の分裂分離、暴力や性行為を扇動する意味を含んだデザインのタトゥーやレタリングタトゥーがある人々については、徴兵の対象外とすると規定されています。

しかし近年、政府は徴兵逃れを避けるため法律の改正を行い、部分が限られた範囲の入れ墨やタトゥーは対象外としました。

2015年ベトナム国の兵役法改正

入隊の要項

入隊の対象者

男性:18~25歳

女性:18歳~ ※自ら志願し、防衛省に需要がある場合に限る

徴兵期間

2年間 配属地域や部隊によっては期間が短くなる

徴兵年齢延期の対象者

  • 大学等に入学したことにより兵役を延期した者については、27歳になるまで徴兵の対象とされます。
  • 入隊前の検査により良好な健康状態にないことが認められた者
  • 労働能力を失った家族を1人で養う者、または危険な事故、災害、疫病により深刻な被害を被った家族の唯一の稼ぎ手である者
  • 病気の兵士および枯葉剤の影響により労働能力の61~80%を失った人々の子供
  • 実の兄弟姉妹が人民軍に入隊中の者
  • 人民警察の職に就いている者
  • 3年以内に省以上レベルの人民委員会が決定する‘社会経済開発プロジェクトで経済社会状況が特に困難な地方に移住した者
  • 経済社会状況が特に困難な地方に赴任している公務員、青年ボランティア
  • 義務教育機関の在学者、大学、職業教育機関での高等教育を受けている者

軍への入隊を免除される者

  • 近視や遠視など視力の問題を持っていたり、HIVやAIDSに感染している人。
  • 顔、首、腕、脚などの人目に触れる部分での傷跡や、タトゥーのある人。
  • 障害者、重い病気、貧困家庭、一人息子。
  • 革命戦死(従軍)者または1級負傷兵の子供
  • 人民軍・人民警察以外の機密・重要業務執行者
  • 経済社会状況が特に困難な地方に24か月以上赴任している公務員、青年ボランティア

軍へ入隊後の生活の様子や新兵の声

午前5時に起きて、午後9時には寝ます。

一日の始まりは運動から始まり、部屋の掃除で終わります。

初めの1か月は生活のリズムに慣れませんでしたが、自分を律していくうちに体が馴染んでいきました。

昼食はわずか約15分で済ませる。新兵たちは自分用の食器を用意し、食べ終わったら自分で洗わなければならない。軍の食事は新兵たちが訓練に集中できるように充分な栄養が確保されています。

休みの日は家族との面会が許されているので、とても楽しみにしています。

軍隊の訓練内容

軍隊の行進

最初の数ヶ月は政治や軍事(射撃や手榴弾や傷口包帯)について学びます。

その後は戦闘訓練に移り銃や重い荷物を持ち30km以上を行進します。

その他森を通過したり川を歩いて渡ったり野営のためテントの設置なども行います。

この期間は連続して野外での活動がメインとなりますので肉体的な疲労はもちろん、ケガなどの危険を伴います。

徴兵後、訓練参加のメリット

軍隊では隊員同士が家族のように親しくなります。

ルームメイトのみんなで一つの煙草を吸ったり、家族や恋人からの手紙を読んだり、1人の喜びがみんなの喜びになります。

兵役を通し、将来仕事および私生活で成功するための学び、訓練、経験を積むことを期待している。

新兵の家族・保護者は入隊は子供たちの成長を促す良い経験であり、祖国を守る任務を全うすべく困難に立ち向かう子供たちを応援したい。

入隊中の禁止事項

軍隊施設では原則、携帯電話の所持は認めていませんが、ほとんどの人は隠れて持っています。もちろん上司に見つかった場合は携帯電話を没収されます。

また、宴会は禁止されていますし、入隊者がこっそり外出した場合、見つかると激しく罰せられ記録書が作られます。そして外出先で会っていた相手は刑罰を受けることになります。

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By なら

介護業界で15年ほど勤務、近年はベトナムの介護施設で管理者として働く。奥様はベトナム人、息子一人。ベトナム語を勉強し、幾度も挫折を繰り返し復活しています。

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